メッセージ
<ヨハネの福音書 12章36節後~43節>
信徒:K
開会聖句
主は闇を隠れ家とし 水の暗闇 濃い雲を ご自分の周りで仮庵とされた。
<詩篇 18篇11節)>
メッセージ内容
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メッセージ原稿を公開しました。
<はじめに>
・前回はベタニアの食事会での出来事でした。この食事会で、ラザロのよみがえりへの感謝を、家族3人が各様に表しました。マリアがイエスさまに注いだナルドの香油は、とても高価だったので、もったいないと厳しく非難されます。しかし、イエスさまは彼女の心のこもった行為をたいそう喜ばれました。ラザロのよみがえりは、カナのぶどう酒の奇跡から始まるイエスさまの「しるしによる宣教」の7つめ、最後です。今日の箇所は、宣教は終わったけれど、その結果はどうだったの?という内容です。主題は「イエスさまのしるしによる宣教結果」。ヨハネが2つの結果報告をしていますので、そこから気づいたことを分かち合いたいと思います。
Ⅰ.報告1 多くのしるしにかかわらず、彼らはイエスを信じなかった。
ベタニアには、死人をよみがえらせたイエスさまを見たい、墓の中にいたラザロも見たいという人が、祭りの時期もあってたくさんやって来ました。食事会の翌日に、イエスさまはロバの子に乗ってエルサレムに入られましたが、噂は噂を呼び、大勢の群衆が熱狂的に迎えたとヨハネは記します。 その少し後に、イエスさまの大変有名なことばがあります。
24節「一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままです。しかし、死ぬなら、豊かな実を結びます。」
このことばを読むと、私は「塩狩峠」という小説を思い出します。今年は三浦綾子さんの生誕百年だそうですが、若い頃、伝道集会でこの映画を見ました。北海道の塩狩峠での実話をもとにした小説で、ブレーキがきかなくて峠を暴走し始める列車を、車掌が自分の身を投げ出して、止め、多くの乗客の命を救った、という感動的な話でした。一粒の麦のように死んで、多くの人のいのちを助けたという話は他にも数々あります。
イエスさまはこの比喩的なことばによって、これから死に向かう決意を弟子たちに示されました。イエスさまが覚悟を決められる最終的場面は、他の福音書ならゲッセマネの園ですが、ヨハネにはそれはありません。27節がイエスさまの心の葛藤を表しています。
「今わたしの心は騒いでいる。何と言おうか。『父よ、この時からわたしをお救いください』…いや、このためにこそ、わたしはこの時に至ったのだ。」
そして、
35節「もう、しばらく、光はあなたがたの間にあります。闇があなたがたを襲うことがないように、あなたがたは光があるうちに歩きなさい。」
と招きをし、
36節後半「イエスはこれらのことを話すと、立ち去って彼らから身を隠された。」
これでイエスさまのしるしによる宣教は終わりました。37節は宣教報告です。
「イエスがこれほど多くのしるしを彼らの目の前で行なわれたのに、彼らはイエスを信じなかった。」
ヨハネの報告①は「多くのしるしを見せたにもかかわらず、彼らはイエスを信じなかった。」 彼はその理由を、イザヤ書2カ所を引用し説明します。
38節b「主よ。私たちが聞いたことを、だれが信じたか。主の御腕はだれに現われたか。」
は、イザヤ53章「苦難のしもべ」から。イエスさまは「ひこばえのよう」「砂漠の地から出た根のよう」、つまり見るべき姿も輝きもなかったので、誰も尊ばなかったのです。えっ、あんなに大歓迎されていたのに?それは一時的なこと。イエスさまの最後は犯罪人としての恥ずかしめの処刑です。大歓迎していた人たちは、希望が大きな落胆に変わり、「十字架につけろ。」と激しくののしりました。
40節「主は彼らの目を見えないようにされた。また、彼らの心を頑なにされた。…」
は、神さまに非があるように思いますが、当時のユダヤ社会の信仰は形骸化していて、彼らの望みはローマからの解放という目先の現実のことばかりでした。イエスさまは、自分はその為のメシアではないことを、武力で戦う王が乗る馬ではなく、平和のしるしであるロバに乗ることで示されましたが、誰もわかりません。彼らの望みはユダヤ人がトップに立つ国、神さまの願いは社会から疎外されている人も尊厳をもって生きていける国です。方向性が全く違うので、彼らの目は開かれませんでした。
今年の後半は宗教の問題が政治の世界で取り上げられ、宗教の自由を損なわないようにどう規制をしたらいいのかが論議されました。私たちがどの神さまを信じてもいいとい信教の自由は大切なことです。しかし、人間は努力しても修行しても、自分の力では神さまを知ることはできないという一面を決して忘れてはならないと思います。神さまを知る、信じるということは、神さまが一人一人の心に働きかけてくださるわざの結果だということを感謝しましょう。
Ⅱ.報告2 しかし、それにもかかわらず、多くの議員たちがイエスを信じた。
では2つめの宣教報告。それはうれしい知らせです。
42節「しかし、それにもかかわらず、議員たちの中にもイエスを信じた者が多くいた。」
神さまがユダヤ人たちの心を頑なにされたにもかかわらず、指導者たちの中にイエスを信じるものが多くいたというのです。大勢の群衆が指導者たちにそそのかされ、手のひらを返すように、十字架につけろとイエスさまをののしったとき、その群集の勢いに圧倒されながらも、少数派の信じる人たちがいました。同様に、指導者側である議員たちの中にも信じるものが多くいたという驚きの報告です。ニコデモとアリマタヤのヨセフだけではなかったということですね。ただ、残念なのは、彼らが会堂からの追放を恐れ、同僚のパリサイ人たちを気にして、公には告白しなかったことで、ヨハネはその理由を
43節「彼らは神からの栄誉よりも、人からの栄誉を愛したのである。」
と、説明しています。
私はこの説明にギクッとします。私も同じ弱さがあるからです。キリスト教が少数派のこの国で、クリスチャンであることを言うのは勇気のいることです。隠すわけではないけれど、必要がなければわざわざ言いません。かえって、今の時代、壁を作ってしまうとも考えます。ですから、このヨハネの報告を読むとき、心が重かったです。しかし、何度も読むうちに、これは私たちの弱さを責め、裁いているのではない。ヨハネが報告したかったのは、「それにもかかわらず、議員たちの…。」という喜ばしい結果であって、「ただし、彼らは神ではなく人を恐れたので…」と付け加えたように思いました。人を恐れたのは12弟子たちも同じです。イエスさまの遺体を引き取り埋葬したのは、ニコデモとアリマタヤのヨセフでしたが、弟子たちは逃げました。隠れました。否みました。人は誰もが弱さや愚かさという部分を持っています。
今日は「鎌倉殿の13人」の最終回です。「北条義時という野心とは無縁であった1人の若者が、いかにして武家の頂点に上り詰めたのか」を描くドラマでした。彼の青年時代の衣装は爽やかな薄い緑、権力闘争に巻き込まれていく中盤がちょっと渋めの緑、実父を追い出し、鎌倉幕府の実権を手にしたとき、漆黒に変わりました。衣装の色の変化は、彼が権力の中枢に上っていくときの、彼の心の変化を表しています。北条家が武家の頂点に立つために、家族や御家人という仲間を大切にする義時から、彼らを切り捨てることを選んでいく義時に変貌していく姿に、「義時の闇落ち」ということばが視聴者の間で飛び交いました。
聖書にも同じように、激しい権力闘争を生き抜いた人物がいます。ダビデ。好感度抜群の青年時代と百戦錬磨の王の時代。しかし権力の頂点に立ち、我に敵なしとなった頃から、彼の隠れていた弱さや愚かさという別の一面が目立ってきます。バテシェバ事件。姦淫、隠蔽、殺人の罪。また、父親としての優柔不断な態度は息子に謀反を起こさせます。ダビデも何度も「闇」を経験します。ただ、義時との違いは、ダビデが度々神の前に出て、取り扱われ、立ち直っていったことです。詩篇51はダビデの悔い改めの詩篇として有名です。
7節「…私を洗ってください。そうすれば、私は雪よりも白くなります。」
17節「神へのいけにえは、砕かれた霊。…神よ あなたはそれを蔑まれません。」
隠しようのない惨めな姿で、隠すことなく神さまの前に出るとき、人は漆黒、闇では終わらず、変えられます。
聖書は人の弱さや愚かさを闇と呼び、私たちを「闇と死の陰に座す者」(詩篇107:10)と呼びます。救いがたい状況に住んでいるということですね。それに対して神さまの住まいは、開会聖句
詩篇18:11「主は闇を隠れ家とし、水の暗闇、濃い雲をご身分の周りで仮庵とされた」
とあるように、闇を隠れ家とし、仮の住まいとしておられます。ある先生は、私たちの住まいと神さまの住まいのことを著書のタイトルで、こう言い表されました。「闇を住み処とする私たち、やみを隠れ家とする神」。とてもわかりやすいと思います。
<終りに>
最後に、なぜ神さまは闇を隠れ家とされるのでしょうか。私たちが神さまと本当の意味で出会うのは、自分の「闇」という誰にも知られたくない恥ずかしい部分だからと思います。私たち人間は、「神は光である」というその存在に耐えることはできません。しかし、神さまの深い愛は、近づきがたく畏れ多い御姿を、闇に隠し、私たちに会うことを選ばれました。弱さと愚かさを持つ人の姿をまとい、私たちの住み処である闇の世界に来られたクリスマスを思い起こさせます。そんな喜びと感謝で心に温めながら、来週のクリスマスを待ち望みましょう。
新聖歌
開会祈祷後:74番、メッセージ後:70番
聖書交読
詩編129篇 1~8節
2022年教会行事
12月21日(水)オリーブいきいき百歳体操(10時~11時)
#54-2847
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