1つの石

    メッセージ

    <ダニエル書 2章44~49節>
    牧師:砂山 智

    開会聖句

    それは、一つの石が人手によらずに山から切り出され、その石が鉄と青銅と粘土と銀と金を打ち砕いたのを、あなたがご覧になったとおりです。

    <ダニエル書 2章45節前半>

    メッセージ内容

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    メッセージ動画公開:11/6 PM 7:17

    メッセージ原稿を公開しました。  

    <序論>  
    ・ダニエルとは「神がさばく」という意味だそうです。本書はダニエルが主要な登場人物であり、彼に啓示された預言が収録されていることから「ダニエル書」と呼ばれています。また、本書は聖書の中の代表的な黙示文学とされていますが、黙示文学とは、「世界大百科事典」によると、「紀元前後のユダヤ教,キリスト教の終末論的色彩の強い一群の文書。〈黙示〉は《ヨハネの黙示録》の表題として初めて出る表現で,神によって開示された秘密を報告する文書を意味する」とあり、「黙示文学の範囲については学者の意見は分かれるが、だれもが黙示文学と認める最初の独立文書は,旧約聖書中の《ダニエル書》である」とありました。ダニエルはバビロンのネブカドネツァル王、ベルシャツァル王、メディアのダレイオス王、ペルシアのキュロス王のもとで活躍した預言者でした。実に長い期間に渡りますが、本当にすごいことです。単なる王の代替わりではなく、支配する国が代わっても重用され続けたわけですから。
    ユダのエホヤキム王の治世の第三年(紀元前605年)に、ネブカドネツァル王がエルサレムを包囲した時、ダニエルはまだ少年でしたが、バビロンに連れて行かれます。ユダの王族の一人であったからです(ダニ1:3~6)。そして、ダニエルはバビロンで貴族の子弟の一人として、他の三人の若者とともに王に仕える官吏となる訓練を受けるために選ばれます。1章17節には次のように書かれています。

    『神はこの四人の少年に、知識と、あらゆる文学を理解する力と、知恵を授けられた。ダニエルは、すべての幻と夢を解くことができた』(同1:17)。
    また、19節。『王が彼らと話してみると、すべての者の中でだれもダニエル、ハナンヤ、ミシャエル、アザルヤに並ぶ者はいなかった。そこで四人は王に仕えることになった』(同1:19)。

    特にこの19節は、今朝の事件の後のことではないかと思われますが、王が見た夢をきっかけとして一つの事件が起きるのです。

    <本論>
    1.王が見た夢

    それは2章1節にあるように、ネブカドネツァル王の治世の第二年、つまり紀元前603年のことでした。ネブカドネツァルは何度か不思議な夢を見、そのために心が騒ぎ眠れなくなり、その夢を解き明かすようにと、呪法師などを召し集めます。王は彼らがでたらめなことを言うのを警戒して、夢の内容そのものは教えず、まず自分が見た夢を当ててから解き明かすようにと命じます。そして、もし、彼らができないと言うなら、手足をばらばらにし、家をごみの山にすると告げるのです。王が夢そのものを教えてくれない以上、それを解き明かすことができない彼らは、ついに殺されることになります。その危機を知ったダニエルは神に祈り、王の前に出るのです。それは、ダニエルらが三年間の教育を受けた直後のことで、今朝の箇所の少し前の2章25節を見ると、まだネブカドネツァルも彼らの存在をよく知らなかったみたいです。王はダニエルに向かって

    「私が見た夢とその意味を、本当に私に告げることができるのか」(ダニ2:26)

    と問いかけます。ダニエルはこれに答えて

    「王が求めておられる秘密を王にお示しすることは、知者や、呪文師、呪法師、占星術師などにはできません。しかし天に秘密を明らかにするひとりの神がおられます」(同2:27~28a)

    と言って、神が示してくださった解き明かしを語り始めるのです。それが、2章前半、今朝の場面の前までの話です。

    2.巨大な像

    その夢の解き明かしの内容については31節以降に記されていますが、全部読むと長くなりますので前半部分は割愛しました。王が見たのは一つの巨大な像の夢でした。その像は、頭は純金、胸と両腕は銀、腹とももは青銅、すねは鉄、足は一部が鉄、一部が粘土でできており、王が見ていると、一つの石がその像の鉄と粘土の足を打ち、粉々に砕き、巨大な像全体も砕けて跡形もなくなり、その像を打った石は大きな山となって全土をおおったのです。ダニエルは、その像の金の頭はネブカドネツァル王、あなたのことであり、あなたの後に、あなたよりも劣るもう一つの国が起こり、その次の第三の青銅の国が全地を治めるようになる。そして、第四の国は鉄のように強い国で、その国は先の国々をすべて粉々に砕いてしまう。最後の鉄と粘土でできた足はそれが分裂した国々のことで、それらの国々は、一部は強く、一部はもろい、と解き明かします。これは、後の7章で、ネブカドネツァルの息子で次の王となったベルシャツァルが見た夢に出て来る「四頭の大きな獣」とリンクしているのですが、一般的な解釈では、頭はバビロン、胸と両腕はメディア・ペルシア連合、腹とももはギリシア(マケドニア)、そして、すねと足はローマ帝国とその後に続く国々を指しているとされています。特に、第四の王国は、強い反面、分裂しているというもろさがありました。それは、ローマ帝国以降の分断と対立の歴史を示すものです(395年の東西分裂・西ローマ帝国486年滅亡と東ローマ帝国1475年滅亡)。そして、その流れは今も続いているように思えます。国や民族間の分断と対立は深刻さを増し、今や核兵器による世界最終戦争という人類存亡の危機まで叫ばれるようになり、ロシア、ウクライナだけにとどまらず、全世界がその恐怖に恐れ戦いているのです。

    3.時が満ち

    さて、今朝の説教題は「一つの石」ですが、これは、今の私たちから見れば、イエスを、そして、イエス様が教えてくださった神の国を指していると言えるでしょう。イエス様は十字架にかけられる直前、エルサレムの神殿でユダヤ人宗教指導者たちと議論する中で、「あなたがたは、聖書に次のようにあるのを読んだことがないのですか。

    『家を建てる者たちが捨てた石、それが要の石となった。これは主がなさったこと。私たちの目には不思議なことだ。』(マタイ21:42)

    と、「詩篇」188篇のメシヤ預言を引用されました。それは、あなたがたはメシヤであるわたしを見捨てることになる。しかし、その十字架の死こそが全世界を救う要の石となるのだ、ということです。
    そして、今朝のダニエルの預言から、このイエス様の国、神の国の特徴を読み解くことができます。まず一つ目は、その国は神ご自身が起こされ、建てられた国であるということです。今朝の開会聖句の45節にある「人手によらず山から切り出され」というのはそういう意味ですね。そして二つ目は、その前の44節にある「その国は永遠に滅ぼされることがなく~この国は永遠に続きます」ということです。そして三つ目は、「反対にこれらの国々をことごとく打ち砕いて、滅ぼし尽くします」。新約聖書「Ⅰコリント」に

    『すべての敵をその足の下に置くまで、キリストは王として治めることになっているからです』(Ⅰコリ15:25)

    とある通りです。そして、最後の四つ目は、巨大な像を砕いた石が大きな山となって全土をおおったように、神の国はこの世の国境、民族や言語、文化や思想の違いを超えて全世界に満ちるということです。

    <結論>

    ダニエルとその友人たちは異国の地で困難な状況に直面しながらも、神の国の希望に生き、はっきりとした歴史観をもって語り、その使命を果たし続けました。私たちも彼らと同じ神の国の希望に生きる者として歩み続けたいと願います。そのために、最後に二つのことをお話ししたいと思います。
    まず一つは、神は、「すでに」決定的なご自身の業を、イエス・キリストにおいてなしてくださったということです。信仰において、私たち神の民は、「すでに」神の国・神の統治に入れられています。神は「すでに」私たちをありのままで愛し、受け入れてくださっているのです。しかし、イエス様が再び来られる時まで、「いまだ」完全な意味では、神の国はその豊かさのすべてを現してはおらず、残念ながら、この地上においては悪の力、死の影響を無視したり、侮ることはできません。私たちはまさに、この世においては「蛇のように賢く、鳩のように素直で」なければならないのです。私たちは、この「すでに」と「いまだ」の間の時代に生かされているということを忘れてはならないと思います。そして、もう一つは、神の国は「やがて必ず」完成するということです。今朝のダニエルも「やがて必ず」との確信をもってネブカドネツァルの前に立ち、恐れずに自らの信じるところを語りました。「箴言」に

    『人を恐れると罠にかかる。しかし、主に信頼する者は高い所にかくまわれる』(箴29:25)

    とあります。私たちも、ダニエルのように、本当に恐れなければならない方を恐れつつ、「やがて必ず」完成する神の国の民として歩み続けましょう。

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    新聖歌

    開会祈祷後:110番、メッセージ後:505番

    聖書交読

    詩編123篇 1~4節

    2022年教会行事

    11月9日(水)オリーブいきいき百歳体操(10時~11時)

    #54-2841

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